ビジネスパーソンの英語コミュニケーションのために

ETNのアプローチ

2.ビジネスコミュニケーション能力の学習目標
「ことば」の能力

 「ことばの能力」を向上させるためには、「語彙」「文法」「発音」「流暢さ」「社会言語要素」の5つの項目を学習する必要があります。

下のグラフは、アメリカの言語学者のヒッグスが1982年に発表した、言語学の世界では有名な「ヒッグス・グラフ」です。このグラフは、第二言語を学習する際の主な学習項目が、Vocabulary(語彙力)、Grammar(文法の知識)、Pronunciation(発音)、Fluency(流暢さ)、Sociolinguistic(社会言語能力)の5つあること、そして学習レベルによって、それぞれの学習項目の重要度が変化することを示しています。「語彙」は、一つのことばの単語の総体のことをいい、「語彙力」とは、知っている、または使える単語の範囲のことです。ヒッグス・グラフによると、「語彙」、つまり単語を覚えることは、初級から中級レベルにおいての最重要項目となっています。先ずは基本的な単語を覚えないと何も始まらないということです。文法は、初級レベルでは単語の習得に次ぐ重要項目となっていますが、中級レベル以上では単語の習得を超え、最重要項目となっています。まれに文法の学習は必要ないと主張されることもありますが、言語の習得を助ける目的の文法は、学習した方が効率的に英語を習得できます。発音は、初級レベルでは文法同様重要項目ですが、一旦重要度が下がってまた上昇しています。一旦基礎的なことを習得した時点で重要度は下がり、流暢さを向上させる際に、イントネーションやリズムも含めて再度重要になるということだと思われます。

ヒッグス・グラフ(1)(第二言語の学習における学習項目とそのレベル別重要度)

「流暢さ」とは、語彙や文法の知識を実際のコミュニケーションで使えるようにする能力で、日本人にとって非常に重要な項目です。

「会話能力」や「談話力」ともいわれ、正しい文をうまくつなげて会話にする能力も含まれますが、一般的には「読む・聞く・書く・話す」全ての流暢さと考えてください。単語を覚えて文法を学習し、正しい文を作れるようになり、発音やスペリングもマスターしても、それを実際のコミュニケーションで使うためには、正しい文をうまくつなげて流暢に会話したり、時間をかけずにすらすらと書いたりする能力が必要になります。例えば、会話の流暢さを身につけるためには、「相手が発する単語の発音を聞き取って、その意味を理解し、構文や文法構造を解析した後、適切な単語を選び、構文・文法に沿って組み立てて、適切な発音を選び発話する」という脳内の処理を無意識的にできるように練習をする必要があります。グラフでは、あまり重要度は高くありませんが、受験英語のおかげで比較的語彙力と文法力があるにも関わらず、一般的に話すことが苦手な日本人にとっては、重要度が非常に高い項目です。

状況や場面に応じて、社会的に「適切な」語彙や表現を使う能力を社会言語能力といいます。

この能力が欠けていると円滑なコミュニケーションができない要素です。例えば、日本語圏では上司をファースト・ネームで呼ぶ事は許されないというようなこと*1や、「すみません」=”I am sorry”は、日本では、壊れた関係を修復しようとする熱意の現れと見なされ、必ずしも責任を認めたとはとられませんが、アメリカでは悪事や不正行為を認めることと受け止められる*2ので、「すみません」や「申し訳ありません」という意味での “I am sorry” は滅多に使われないというような知識を含みます。 他の英語力が向上すると、当然のこととして期待される言語能力の一つですので、グローバルなビジネス環境でよく使用される、独特な表現や特殊な意味の語彙、適切な使い方などを、文化的な背景を含めて体得していきたいものです。グラフではあまり重要度は高くないですが、ビジネスではより重要度が高くなる要素です。

「ことばの能力」の学習目標

*1
白井恭弘(2008)「外国語学習の科学〜第二言語習得論とは何か」
*2
Harvard Business Review 2012年10月号
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