ビジネスパーソンの英語コミュニケーションのために

ETNのアプローチ

4.英語を習得できない理由

学習者が効率的な学習方法を知らないことが、英語を習得できない最大の理由です。

本来の英語講師の役割は「英語」と「英語の効率的な学習方法」を教えることです。英会話学校に通ったり、TOEIC®対策教材で独学したり、テレビやラジオの講座もやったけど、なかなか効果がでなかった経験をした方は多いのはないでしょうか。なぜ効果が出なかったのでしょうか?「何らかの理由で続かなかった」、「講師や教材が自分と合わなかった」、「自分のレベルに合ってなかった」など、色々な理由が思い浮かぶと思いますが、理由はたった一つだと考えます。それは、「英語の学習方法を知らない」から英語を習得できないのです。英語の学習は、広い海原で目的地に向かって泳ぎ出す事とよく似ています。海の上で目的地に向かって泳ぎ出したけれど、方向が間違っていればいくら効率的に泳いでも目的地にはたどり着けません。また、目的地への方向は合っていても泳ぎ方が非効率であれば、必要以上に時間が掛かってしまいます。目的地に効率的にたどり着くためには、どっちに向かって泳げばよいのかを教えてくれる地図とコンパス、そして地図の読み方とコンパスの使い方、そして泳ぎ方を教えてくれるコーチが必要でしょう。英語の学習で言うと、学習計画(地図)、教材と辞書(コンパス)、そして講師(ENTでは「Tutor」といいます。)(コーチ)です。Tutorの役割は、個々の学習者(泳ぐ人)に合った効率的な学習計画(地図)を準備し、辞書と教材(コンパス)の使い方と効果的な学習方法(目的地への最短ルート)を教え、そして英語(泳ぎ方)を教えること、このような総合的なサポートをする事だと考えます。

日本のビジネスパーソンの一般的なビジネス英語の学習方法は、①英会話学校に通う、②テレビやラジオの英語講座を視聴する、③市販の英語教材を購入して独学の3つが大半を占めます。

しかしながら、それらのいずれも、単独でやっていたのではあまり効果がありません。下の2つのグラフは、雑誌「PRESIDENT」が30歳以上のビジネスパーソン1,000人を対象に、これまで試した英語の学習方法と、効果がなかった英語の学習方法についてアンケートを実施した結果です *1。上記3つの学習方法の他に、英語の雑誌・英字新聞・洋書を読む、英語のラジオ・テレビ・洋画を視聴する、アメリカの大学のオンライン講座に参加している方などもいます。携帯のアプリやゲームを使って学習をしている方もいますが、アンケートの結果では、この方法はとびぬけて学習効果が低いという結果が出ています。しかしながら、その他は学習効果の点ではそれほど差がありません。これは、それぞれ全く効果がなかったということではなく、それぞれ単独にやってもあまり効果はでないということだと考えます。

30歳以上のビジネスパーソン1,000人アンケート

30歳以上のビジネスパーソン1,000人アンケート

一般的な英会話学校(オンラインを含む)に通うだけでは効率的とはいえません。

英会話学校と平行して、自主学習で語彙や文法を基礎から学ぶこと、そして英会話学校で習ったことを何度も繰り返しアウトプットすることが重要です。一般的な英会話学校のレッスンでは、マンツーマン(ETNでは「ワン・オン・ワン」といいます*2)でもグループの場合でも、その教え方は、教材にでてくる定型表現を暗記させたり、ミーティング等を想定したロールプレイが中心となっています。つまり、よく使われる語彙やフレーズ、表現方法を覚えることが中心となっています。これは、オンラインでのレッスンでも同じではないでしょうか。このトップダウン・アプローチは、既に説明したように、確かに即効性があり非常に有効です。しかしながら、このアプローチ方法だけの学習を長期間続けたとしても、いつまで経っても自分の意見とその根拠を自由に表現できるようにはなりません。単語と文法を基礎から積み上げて習得していくボトムアップの学習も必要になります。英会話学校で使用する教材には文法項目も含まれている場合が多いと思いますが、それについて教えてくれることは非常に稀です。それはネイティブの講師が教えられないというのが一番の理由でしょう。普通の日本人が日本語の文法を日本語非ネイティブに教えられないことと同じです。また、これらの英会話学校では、学習者の希望によりフリー・ディスカッションといって、ある題材について自由にディスカッションしながら、表現の仕方をアドホックに教える方法をとる場合もあります。この方法についても注意が必要です。まず、その場その場で教えてもらっても、それを繰り返し練習しなければ脳に定着しません。脳科学的にいうと、意味記憶としても、エピソード記憶としても、ましてや手続き記憶としても脳に定着しません。また、基礎力がないのにも関わらず、フリーディスカッションと称してアウトプット(話すこと)と強制すると、「変な」英語が身に付く恐れがあります。学習者自身が苦労してアウトプットした「変」な表現の方が、講師に修正してもらったインプットよりも脳に定着しやすいからです。

テレビやラジオの英語講座だけでも限界があります。

これらの英語講座と平行して、自主学習で基礎から学習すること、講座で学習したことを何度も繰り返すこと、そしてアウトプットの機会を持つことが必要です。NHKなどが提供しているテレビやラジオの英語講座は、英語の習得に非常に役立ちます。時事問題を題材にしたりドラマ風にしたりするなど、飽きさせない工夫をしており視聴していて面白く、かつリピーティングやシャドーイング(詳しくは後述を参照してください。)など、第二言語習得研究に沿った効果的な方法で教えている講座も多いと思います。様々なレベルのものが用意されており、一度視聴すれば簡単に自分に合ったレベルかどうかがわかりますし、自分のレベルに合ったものを継続的に受講すれば効果は確実に出ると思います。しかしながら、これらの英語講座も、一般的な英会話学校と同じように、これだけでは効率的ではありません。よく使われる語彙やフレーズ、表現方法を覚えることが中心になりがちで、基礎を積み上げることにはつながらない、また、インプット(読む・聞く)が中心になりがちで、あまりアウトプット(書く・話す)の練習にはならないのでははないでしょうか。また、発音やイントネーションの矯正、ことば以外のコミュニケーションに影響を与える要素などの、実践の場で学ぶ必要のあるものはテレビやラジオで習得するのは難しいでしょう。

市販の英語学習教材での独学だけでも限界があります。

実際にネイティブとコミュニケーションしてアウトプットする機会をもつこと、そして適切な教材の組み合わせについて既習者に相談することも必要でしょう。英語学習への関心が高まるなか、英語の教材は書店などで数多く販売されています。そしてそのほとんどが非常によく出来ていると思います。最近では神経科学(脳科学)や認知心理学などを応用したり、第二言語習得研究に基づいた教材など、非常にレベルの高いものもあります。ボトムアップ・アプローチの教材もトップダウンの教材もあります。また、効率的・効果的な学習の方法を細かく説明したものも多く出ていますので、それに沿って学習すれば英語力を格段に向上させることも可能だと思います。しかしながら、英語習得に必要なプロセスの全てをカバーする教材は未だ存在していませんので(また、そのような教材を開発することは不可能だと思います)、複数の教材を平行して使用する必要があります。その際、どの教材が信頼できるのか、自分に合っているのか、どの教材とどの教材を、いつどのように組み合わせてやればよいのかなどの学習計画を英語学習者が自ら立てるこが必要になりますが、これは非常に難しいのではないでしょうか。それに加えて、市販の教材での学習はインプット(読み・聞くこと)が中心になりがちです。また、ことば(英語)は、コミュニケーション・ツールの一部に過ぎません。表情、しぐさやジェスチャー、会話の間の取り方、状況に応じた適切な表現方法やマナーなどの言葉以外の要素、そして発音やイントネーションなどは、ネイティブと実際にやり取りしながら、指摘を受けつつ学ぶことが必要です。

英字新聞・雑誌、ペーパーバックなどをとにかく読むことに集中している方もいると思いますが、特に初級・中級者の方にはあまりおすすめできません。

先ずは基礎を固めることです。確かに「多読」は英語の習得に非常に有効は方法の一つです。必須といってもいいでしょう。なぜならば、多読は自動化を促す効果があり、更に未習の単語や文法項目も習得することが可能だからです。この多読の学習効果については、第二言語習得研究からも報告されています(多読の詳細については後述を参照してください。)。しかしながら、特に初級者の方々が注意すべきことですが、多読の効果を最大限に引き出すためには、個々の学習者のレベルに合った適切なものを選ぶことが非常に重要です。第二言語習得研究からは、知らない語彙や文法項目が全体の5%程度以下のものでないと、それらの効果はあまり期待できないといわれているからです*3。まずは、語彙や文法の基礎を固めることはもちろんですが、英文を前から理解していく(後ろから戻りながら訳さない)方法を身に付けることが必要です。特に初級者の方々が辞書を片手にやみくもに難しい英字新聞やペーパーバックを読むことは非常に非効率な学習方法です。ただし、全く効果がないとはいいません。初級・中級の方々がこの方法で効果を上げたいのであれば、英文全ての語彙や文法項目を完全に理解してから何度も繰り返し読むことです。そうすれば、語彙や文法項目の理解の自動化も期待でき、英文を前から読むくせがつくことも期待できます。しかしやはりインプットのみになるのでアウトプットの機会も持ちましょう。

洋画やドラマ、ニュースなどを観て、とにかく聞くことに集中している方もいると思いますが、これも初級・中級者の方にはあまりおすすめできません。

やはり、先ずは基礎を固めることです。多くの英語を読む「多読」同様、多くの英語を聴く「多聴」も英語の習得には非常に有効な方法の一つです。脳科学の池谷准教授は、動物は進化の過程で、目よりも耳をよく活用してきたので、耳の記憶は目の記憶よりも強く心によくのこるといいます。また多聴は、単語や文法項目を理解することや、英文を前から理解することの自動化が促進されることに加え、未習の単語や文法項目も習得することも可能だといわれています。しかしながら、多読同様、知らない語彙や文法項目がほとんどないものを使用しないと、それらの効果はあまり期待できないといわれています。はやり、まずは語彙や文法の基礎を固めることが必要です。初級・中級の方々がこの方法で効果を上げたいのであれば、スクリプト全ての語彙や文法項目を完全に理解してから何度も繰り返し読み、聞くことです。

「聞き流すだけでペラペラ」を宣伝文句している学習教材がありますが、第二言語習得研究および脳科学研究からみても全く根拠がありません。

このような教材は、語彙や文法構造を全く理解しないで、よく使用される表現を繰り返し聞かせ、ただ丸暗記することを目的としています。この方法は、大人の脳が不得意とする「意味記憶」能力に訴える学習方法です。つまり大人にとっては、全く効果がないとは言えないまでも、極めて効率が悪い学習方法と言えるでしょう。第二言語習得研究の立場からも、「聞き流すだけ」では、「アウトプットの必要性」を満たしていないのみならず、「インプット」にもなっていないので「ペラペラ」になることは不可能でしょう。繰り返しになりますが、第二言語習得研究がいう「インプット」とは、単に「聞き流すだけ」ではありえません。当然、特に大人の場合は、「語彙の意味や文の構造を理解しながら聞くこと、読むこと」を指しています。このような教材を使用して少しでも効果を上げるためには、スクリプトの語彙や文法を完全に理解してから何度も聞き、何度も暗唱することです。つまりトップダウン・アプローチです。しかしながら、自分の意見とその根拠を自由に表現できるようになるには、基礎からの学習、つまりボトムアップ・アプローチと、アウトプットの機会をもつことが必要です。

TOEIC<sup>®</sup>の点数を上げることだけを目標とした学習は非効率です。

ビジネスパーソンの方々の多くはTOEIC®対策の学習をしている方が多いのではないでしょうか。TOEIC®対策教材で独学で学習されている方や、TOEIC®対策の英語講座を受けている方も多いと思います。しなしながら、TOEIC®の点数を上げることだけを目標とした学習は非効率です。米パデュー大学のカーピック博士(脳科学)が、情報を何度も入れ込む(インプットする)よりも、その情報を何度も使う(アウトプットする)ことで、長期間安定して情報を保存することができることを証明する論文を「サイエンス」に発表したことは既に説明しました。このことは、英語を「読む、聞く」練習を何度も繰り返すよりも、「書く、話す」練習を繰り返した方が脳に記憶が定着しやすいことにつながります。「読む、聞く」能力を測るTOEIC®の点数だけを気にして、「読む、聞く」能力だけを伸ばそうとする事は、人間の脳の性質を考えると非常に非効率な学習方法だといえます。

TOEIC<sup>®</sup>の点数を上げることだけを目標とした学習は非効率です。

従って、TOEIC®の点数が高くても仕事で使用するレベルにはほど遠いということが起こります。TOEIC®を運営するETSが行った検証によると、「聞く、読む」能力と「話す、書く」能力には高い相関関係があるので、「聞く、読む」能力が高ければ「話す、書く」能力もかなりの精度をもって高いと判断できるとしています。しかし、これは多くの日本企業の人事担当者の感覚と大きく異なるのではないでしょうか。TOEIC®の点数が高くても、実際に英語で仕事が出来るレベルにはほど遠いという事例を日本企業はたくさん見てきました。それは、話せないことが一番の理由です。コンコーディア大学(カナダ)のノーマン・セガロウィッツ教授(心理言語学)も指摘していますが、話せるようになるには、相手の発音を聞き取って理解することに加え、適切な語を選び、文法に沿って組み立てて発音するというプロセスを自動的にできる(自動化できる)ように繰り返し練習する必要があるのです。参考までに、下の表は、雑誌「PRESIDENT」による「簡単な商談や取引ができるようになるまであと何年?」というアンケートの結果です。ETSによると、TOEIC® 730点は、「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている。」とし、「通常会話は完全に理解でき、応答もはやい。話題が特定分野にわたっても、対応できるちからを持っている。業務上も大きな支障はない。」とされています。しかしながら下の表を見ると、実際には730点以上でも半数以上の人が簡単な商談や取引ができないと答えています。また、もう一方の表は、英語で商談ができる人のうち、TOEIC®に特化した勉強をした(している)かどうかのアンケート結果です。7割以上の人が、TOEIC®に特化した勉強はしていないことがわかります。TOEIC®に特化した学習ではなく、知識をアウトプットできるようになるための自動化の訓練、そして、言葉以外の要素、発音やイントネーションなどを、ネイティブと実際にやり取りしながら、指摘を受けつつ学ぶことが必要です。

30歳以上のビジネスパーソン1,000人アンケート

30歳以上のビジネスパーソン1,000人アンケート

英語が習得できない理由

*1
「PRESIDENT」2011年4月18日号
*2
日本の英会話学校などでは「マンツーマン」という和製英語を使用していますが、適切な英語は「One to One」または「One on One」です。英語を教える機関が不適切な英語を使用しているのはとても不思議です。
*3
門田修平(2012)「シャドーイング・音読と英語取得の科学〜インプットからアウトプットへ」
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